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あやめの部屋に入るのは彼女が引っ越ししてきて以来だ。 シンプルだけど可愛らしい部屋だな。 ポスンとベッドに降ろし、携帯を枕元に置く。 明日仕事だけど起きられるのかなこの子。 一度部屋から出てメイク落としに必要な物を仕事道具から取り出す。 ベッドの傍らに座ってコットンに染み込ませておでこから拭き取ろうと前髪を上げた。 「あやめ 帰ってきたんだけどイタリアから」 呼び掛けても相変わらずスヤスヤと寝息を立てている。 「化粧薄いね もうすぐ26才なんだからちゃんとケアしないと」 時々顔を動かしてうーっと唸る顔に吹き出しそうになる。 「酔っ払いの面倒はみないってルールだったよね?」 化粧水と乳液も付けてあげた。 カーテンの隙間から光を受けてあやめの指先で石が光る。 「可愛らしいネイルして……… 珍しいじゃん」 少し冷たいあやめの指先に触れ艶々しているジェルネイルを撫でた。 使用済みのコットンを纏めて立ち上がろうとベッドに手をついたらスプリングが思いの外深く沈んだ。 「あ」
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