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「明日朝早いから終わるのはお昼過ぎくらいなんだけど、時々モデル頼む友達と一緒だからお礼とかしてたら遅くなるかも」
「あ………分かった」
「何か元気無い?」
私を覗き込むケイの顔が、前髪を切って視界の広くなった私の前に現れた。
「……!
そんな事ないよ
っ熱」
吃驚して落し蓋を掴んだ手が鍋肌に触れた。
「あ」
ケイが私の手首を掴みシンクに引き寄せ水道のレバーを上げ水に浸す。
「あ……りがと」
上手く息が出来ない。
私の右側から背中はケイの腕や胸板に触れていて、
シンクの縁を片方の手で掴んでいるから私は閉じ込められている状態。
「氷で冷やせば大丈夫みたい」
大きくて関節が出っ張った綺麗な手が私に触れている。
「ありがとう
もう平気
ご飯食べよう?」
美味しいと喜んで食べてくれるケイの顔を見ながら
私は自然と出ていたはずの笑顔について考えてしまい
訳のわからない蟻地獄にまたはまってしまっていた。
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