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「あの、お金」 私が千円を差し出すと 男性は掌でそれを私に押し戻す。 「いいって、家に帰る代金浮いたから 早く帰りなよ もう遅いんだし」 ちょっとぶっきらぼうだけど言葉の端々に優しさがある人だと思った。 「あ」 男性が横を向いて言葉を漏らした。 つられて私もそちらを見ると、ケイが此方に走ってきていた。 「「ケイ」」 ケイに呼び掛けた筈だったのに男性の声もハモらなかった? 私は目の前の男性を見上げた。 彼も私を見下ろしている。 「……………え」 顎に手を添え私を観察するようにまじまじと見てくる。 「あやめ おかえり」 「あ、ただいま」 「あぁこの子がルームメート?」 ケイとの会話を聞いた男性は納得したように声を上げた。 状況が理解できなくて私はケイに目で助けを求める。 「あ、これ友達の朝日」 ケイが肩を竦めて言う。 友達……… あ、もしかして初恋の人? 私はもう一度彼を見た。 「初めまして」 無表情だった彼は爽やかな笑みを作り私に挨拶をする。 確かに見た目だけなら私のタイプかも。
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