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先輩を見送り解散した後
雨がぱらついていたからタクシーへ乗るため駅のロータリーへと向かった。
雨が降り出したからタクシー乗り場には既に沢山の人が並んでいた。
その列最後尾に並ぶと私の前のカップルが仲良さそうに寄り添っていた。
時々耳元で何か囁き合って笑っている。
背の高い男性が屈み耳を寄せ
女性はその肩に手をかけ背伸びしていた。
微笑ましいな。
女性は私より10才位年上だろうか、横顔は若く見えるが後ろから見る立ち姿や手の感じが何と無く大人な感じがした。
止みそうもない空を見上げれば灰色の雲が立ち込めていて、ついつい溜め息を誘う。
15分程経って前に並んでいた彼女がタクシーへ乗り込む。
タクシーの後部座席から手を振る彼女の薬指には指輪があった。
一緒に帰らないんだ
その事が何と無くひっかかった。
彼女の乗ったタクシーを見送った男性の横顔が初めて見えた。
「………あ」
私の声に振り向いたのは
目を丸くした朝日さんだった。
暫く無言で見つめ合い
固まっていたが
タクシーが滑り込んだことで
朝日さんははっとし
「途中で降ろすよ」
と相乗りを促す。
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