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朝日さんはタクシーの中では窓の外を眺めていた。
黙っている彼を一瞥し、私も窓の外に目を向ける。
雨粒がビーズみたいに窓に張り付いて、信号や街灯の光を含んで虹の様に煌めいた。
「着きましたよ」
運転手さんの声ではっとした。
「あ、すいません」
鞄からお財布を取り出した時、朝日さんの手がすっと運転手さんに伸びた。
「おつりは良いです」
朝日さんがスマートにお札を差し出す。
「ありがとうございます」
運転手さんが笑顔でお金を受け取った。
朝日さんが外に出る為私の方に身体を動かしてきた。
「え?」
「あやめちゃん出て?」
「はいっ」
私が慌てて外に出るとその横に背の高い朝日さんが立つ。
「朝日さん
今日も泊まっていくんですか?」
私が見上げて伺うと、
朝日さんはちょっとだけ口角を上げて
私を見ていた。
「あやめちゃん時間ある?」
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