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花がぱしぱしと私の腕を揺さぶるから ソーサーに紅茶が少し溢れた。 「花ちょっと」 溜め息混じりに花が指す方に目を向けたら黒髪で長身の細身のスーツが良く似合う男性が携帯で話している姿があった。 「土曜日も仕事なんだ」 花の呟く声は右から左に抜けていた。 「…………」 その見惚れる等身の男性は 朝日さんだった。 『女癖さえ悪くなければ完璧なんだけどな』 『直ぐに女の人に声かけちゃうんだよね』 『自分から手も出さない素敵な人で、どうやら彼女に一途で大切にしてるみたい』 『俺が口説こうがケイには関係無いよね』 ………………どれも彼だ。 だけど私が知っている朝日さんの本当の顔はどれなの? 頭の中に湧き出た疑問がぐるぐると回る。 『あやめちゃんは好きになっちゃいけない人を好きになった事ある?』 彼の本当の顔は…………。
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