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「あ」
「あった!」
映画の試写会でエンドロールが流れる中、ケイの名前を発見し二人で声を潜めはしゃいだ。
「凄い凄い」
「まだまだ下っぱだけどね」
館内が明るくなって観客がぞろぞろと出口へ向かう中私たちは席に座ったまま余韻に浸っていた。
「映画も良かったね」
「うん………携われて良かった」
一年前に撮影をした映画だったらしく、主演の女優は髪をばっさりと切って舞台挨拶を行っていたのをニュースで見た。
「実はね、これを撮った監督がまた映画撮るんだって
それに誘われてるんだ」
「わぁ!凄いじゃん」
「でも……海外なんだよね撮影」
「………行きっぱなしって事?」
「うん
3ヶ月」
「そっか」
「まだ分からないけどね?」
その事を聞いて前みたいに簡単にいってらっしゃいと言えない自分がいる。
何だろう
この胸に張り付く灰色の靄は。
「あれ?」
マンションの前に朝日さんが立っていて
私達を見つけると手を挙げた。
「朝日
どうしたの?」
「ちょっとね
あやめちゃんこんばんは」
首をかしげて朝日さんが私に笑いかける。
「こんばんは」
私も笑って挨拶をした。
朝日さんが満足そうに笑みを浮かべる。
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