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朝日さんがルームシェアに加わってから夜がちょっと賑やかになったくらいで 余り変わらない日常を送っていた。 7月も中旬に入り、梅雨明け間近な蒸し暑い夕方。 灰色の雲を纏った西の空の隙間から目映い金色の光が筋を伸ばしていた。 「あやめちゃん お待たせ」 「朝日さん」 仕事帰りに二人でご飯に行った。 相変わらず見た目だけなら私のタイプだなぁ。 眼鏡かけて欲しい 黒縁の。 観察を楽しんで一人でにやっとしてしまった。 「付き合ってくれて有り難う」 「いえ」 個室に案内されて席に着くと窓からは手入れの行き届いた日本庭園が見えた。 「あの………なんだかちょっとご飯いかない?っていう雰囲気じゃない……ですよね」 どきどきして朝日さんに話し掛けると 「ふっ」 と笑って 「もっと楽にしてよ」 と正座を崩すよう促された。 お料理が運ばれて人の出入りが落ち着いたら 「あやめちゃんに聞いて貰いたい事が有ってね」 朝日さんが頭を傾けて私を見る。 「あ、はい」 思わずピシッと背筋を伸ばした。
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