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黙っていた彼女は 暫くして 斜め後ろを振り向いて 朝日さんを見上げた。 「……………ごめん」 朝日さんが呟くと 彼女は一度俯いて 涙を拭いてからまた見上げた。 「謝らないでよ…… 私こそごめんなさい 今まで有り難う」 無理矢理作った笑顔で彼女はそう言った。 此方に振り向いて 一瞬気まずそうな顔して 会釈をして帰っていった。 彼女の去り行く後ろ姿は 素敵だった。 「あやめちゃん」 彼女を見送った後私を呼ぶ朝日さんの声。 「…………すいません 余計な事ばっかり言って」 私は朝日さんに振り向き様に頭を下げた。 「………有り難う」 後頭部に置かれた手がくしゅくしゅ動く。 「買い被りすぎじゃない? 好きな娘が出来ただけかもしれないのに」 「それは 朝日さんがそう見せてるだけでしょ?」 くしゃくしゃにされた髪の毛を手で直しながら抗議の目を向ける。
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