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私は平和惚けしていたのかもしれない。 ユラユラと心地よい温かさに 深く沈みそうになった時 私を呼ぶ声がして 意識が戻った。 「…………」 「俺さ 言ってなかった事があるのね」 朝日さんの声が何時もより近くに聞こえた。 「何?」 ケイの声が体に響く。 私ケイに…………おんぶされてるんだ。 少し長めの柔かな髪がふわふわと私の鼻や頬に触れくすぐったかった。 「実はまだ 部屋引き払ってないの」 「………え?」 私も声を出しそうになった。 「ごめん 引越ししようと思ってたのは本当なんだ。 ほら、もし俺がルームシェアに押し入って 上手く行かなかったら 出てく気だったし」 「………それで? どうしたいの今は」 ケイは立ち止まって一度私を背負い直すため反動を付けた。 「………ゎ」 しゃっくりみたいな小さな悲鳴が出てしまった事にビクビクしながら私は寝た振りを続けた。 今はその方が良いと思って。 「…………本格的に 移住していい?」 私の荷物も持ってくれてる朝日さんは持ち方を変えながらケイを伺った。
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