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「ちょっと痩せた?」 ケイと洗面所で並びながら歯を磨いていたらそう言われた。 「……そう? ヨガが効いてるのかな」 私は曖昧に笑った。 最近 ご飯があまり食べられない。 皆が要るところでは ちゃんと食べられる。 夏バテのせい……………… なんかじゃ無いって言うのは解っている。 『好き』という言葉が喉まででかかったり、 ふと涙が込み上げてきたり、 そんなのばっかりで 完全に恋に溺れちゃっている。 ご飯が食べられないのも そのせいなんだ。 女性に接する仕事のせいか ケイは私の些細な変化に気付く。 外見的な変化に気付いて貰えるのは嬉しいけど 内面的なものを察知されるのは困る。 多分曖昧に笑ってしまう私の癖をケイは気付いているだろう。 でも深く追求はしてこない。 「あやめ」 「ん?」 「花火大会の日 ちょっと時間貰える?」 …………… 心臓がばくんと大きく跳ねた。 「………え?」 私は鏡から目を離しケイを見上げた。 口をゆすぎ、タオルで口元を拭いていたケイは笑って私を見ていたから緊張した気持ちが少しだけほっとした。 「分かった」
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