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トマトを薄くスライスしバジルを洗うという誰でも出来そうな作業をしながら会話を交わす。
「天野さん料理出来るんだね
苦手かと思ってた」
「割りと好きだよ」
フライパンを振ると食材が綺麗な弧を描く。
「ねぇ、実は天野さんって呼び辛いんだけどあだ名とか無いの?」
私はシンクの縁に手をついて天野さんを見上げる。
「そうね
仕事仲間からはケイって呼ばれてる」
「あ、漢字そう読めるから?
私も呼んでいい?」
フライパンからちらりと此方に目配せをしていいよって言ってくれた。
「本庄さんは?」
「私?
名前で呼ばれてる
あやめって」
「分かった。
じゃ、あやめそこの上の棚から大きなお皿だしてくれる?」
「ラジャ」
頭上の棚を開け、お皿を取り出しコンロの横に置く。
ケイがパスタを滑らせお皿によそった。
カプレーゼ、チキンのハーブ焼き、パスタがダイニングテーブルに並ぶ。
「あやめは飲める人?」
冷蔵庫の前でケイが振り向く。
テーブルにフォークや取り皿を並べていた私は笑顔で
「其なりに」
と答えた。
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