16

8/10
前へ
/431ページ
次へ
街の明かりが程好く煌めいて 夜景と言うには少し規模が小さいけど この景色は気に入っている。 何かを察したのか あやめは膝を抱えて 椅子に座って 背もたれに凭れていた。 「………ケイ」 「ん?」 「…………聞くよ」 覚悟を決めた凛とした声が 胸に響く。 「言いたい事があるんでしょ?」 眉を下げて 此方を見上げたあやめの瞳がゆらっと光った。 「ごめん」 一度深呼吸をし 目線を下げた。 「あやめの事は凄く好きだし 大切だし 良い子だと思ってる でも人としてという壁を越えることは出来ないんだ」 街の光をじっと見つめ 耳を傾けている。 「見ないフリ しようかとも思ったんだけど 前に自分で言ったからね 終わりに出来ないと燻ったままだって 前に進めないって」 視界の端で 静かに涙を拭う 彼女の姿が映って 胸を抉られる。
/431ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2825人が本棚に入れています
本棚に追加