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「大好きだよ あやめの事 でも 愛してあげられない」 夏の夜の穏やかな風が 髪を揺らす。 「幸せになってほしい あやめには いつか 晴れやかな顔で 大好きな人の横で 素敵に笑っていて欲しいんだ」 鼻を啜る音が聞こえ 耐えきれず あやめを見た。 「ごめんね」 頭を撫でてあげたいと 右手が動いたけど 力を込めて それを留めた。 「謝らないでよ 私は良かったと思ってるんだから」 涙声でそう言ったあやめは 無理矢理作った笑顔で 笑いかけた。 「ちゃんと言っても良い?」 膝に顔を寄せて 丸まったあやめが 睫毛を濡らしたまま 見上げてきた。 「ん?何を」 「ケイが 凄く好き」
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