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「………結局家に帰れなかった人
会社に残ったみたい」
ソファに座りメールを見ながら朝日さんが呟いた。
「大変ですね」
私もソファの定位置に膝を抱えて座っていた。
多分うちの会社でも残ってる人はいるだろう。
「………会社に残った方が
良かったかな………」
朝日さんは顎に手をあてながら難しい顔をした。
きっと仕事でトラブルが有ったとき
対応しやすい為だろう。
ニュースでは駅で電車を待つ人々やタクシーを待つ長蛇の列や、風に煽られるリポーターが映っていた。
「…………私は
朝日さんが帰ってきてくれて
安心しました」
不安だった気持ちが
普段言えない様な言葉を
口から出した。
「…………そっか
ならよかった」
顎に手をあてたまま私を見てにっこり笑った。
恥ずかしくなった私は膝に口元を埋めテレビに目を戻した。
「あやめちゃん」
朝日さんが私を呼ぶ。
「今みたいに
素直に言ってくれるの
嬉しいよ」
相変わらず素敵な笑顔で私を見ている。
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