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「………って本当に頭に来ちゃった」 花は昨日の就業前に命じられた仕事で終電まで残された事を愚痴っていた。 「大変だったね」 だけどケーキを頬張った彼女はすっかり笑顔になった。 「ヨガ始めて体が軽くなったんだよね」 「私も」 「週三回行かないとダルくなっちゃうんだよね」 首を回しながら言う花は行けたら毎日行きたいと言うくらいハマっている。 「…………あ 倉持さんだ」 花の呟きに自然と目が彼の姿を探す。 …………え 「おぉめっちゃ美人連れてる いやぁ合うなぁ」 花の声が一枚扉を挟んでいるみたいに遠くから聞こえる。 長くてさらさらな髪を靡かせる綺麗な女の人の横で大人の笑みを浮かべる朝日さんがいた。 「よく見かけるけど……家近いのかな あ、ごめん。 あやめは興味ないよね」 花は顔を私に戻し違う話をし始めたけど、私は動揺を抑えられなくて、彼らの姿が見えなくなるまで目で追ってしまった。 『大丈夫、俺ごっこしていても 誰か好きになれるし』 今更ながらカフェで言われたあの言葉がずんっと杭を打ち込む様に心を重くした。
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