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「あやめ」
部屋の扉をノックしたケイが私の名前を呼んだ。
「……………」
私が反応せずにいると扉を開けて入ってくるのが音で分かった。
「入るよ」
「…………ん」
「どうした?」
帰ってきてベッドにうつ伏せたままの私を見て、労うような言葉をくれる。
彼がベッドの端に座ったのでスプリングが沈みキシリと軋んだ音が耳に響く。
「何かあったの?」
優しい声が降ってくる。
「ケイ」
顔だけ彼に向けて力無く言った。
「ん?」
「私アナタに告白したじゃないですか」
「うん」
「何でそんな優しくするの?
期待しちゃうかもしれないじゃん」
恨めしく見上げるとケイは笑って私を見た。
「でももう好きじゃないでしょ?」
「え?」
にっこり微笑むケイの顔をポカンとしたまま見つめてしまった。
「何か解るよ」
長い足を組んでその膝に絡めた両手を置きながら優しく微笑む。
「好きな人でも出来た?」
ケイの口から出た言葉に驚いて私は起き上がった。
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