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朝日さんから待ってて欲しいと呼び出されたお店は私の会社の近くにあった。 あれ以来ちょっと疎遠になっていて、 (私が勝手に気まずくなってるだけなんだけど) それを気にしてる朝日さんが打開するために設けた席だ。 ルームシェアをしているからこの場を避けても結局家で気まずくなる訳で、呼び出しを無視することは出来なかった。 「お待たせ」 トレンチコートを羽織った朝日さんが私を見つけて歩み寄った。 …………似合う、トレンチコート。 見惚れていた自分にはっとして 小さく首を振った。 「この間」 朝日さんは躊躇うこと無く話始めた。 「言いたいことなんて無いって言ってたよね」 「……ハイ」 「じゃあ 聞きたい事でもあるの?」 顔の前で組んだ手に顎を乗せ朝日さんは真っ直ぐ私を見た。 聞きたい事なら一つある。 「…………」 でもこれを聞くのって なんか…………。 「……そっちか 何? 聞いてくれれば答えるけど?」 長い指が絡んでいる手元を見て朝日さんは肩の力を抜いた。 もぅ 黙っていても仕方ない。 「…………朝日さんは」 テーブル下で握りしめていた拳に更に力を込めた。 「彼女が出来たんですか?」 「…………は?」 「あの 先日 見てしまって」 「何を」 「髪の長い綺麗な女の人と歩いている所を」 「…………あぁ」 物凄く怪訝な顔をされた。 不本意というかそう言われるのが迷惑と言わんばかりに。
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