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「しがないサラリーマンはさ 上司の命令にはYESというしか無いんだよ」 遠くを見ながら急に違う話を始めたから、直ぐには内容が入って来なかった。 「取引先の役員の娘に会っただけ」 「見合いって事ですか?」 「まぁ…………一回会うだけって言われて断りきれなくて」 「…………はぁ」 「…………もしかしてその事が原因?」 「…………」 「はっ まじ迷惑」 空気を漏らす笑いと共に朝日さんの言い方に肩がビクッと震えた。 「すいません」 「…………あ、ごめん あやめちゃんにいってるんじゃなくて」 朝日さんは表情を緩めて椅子に凭れた。 「もしかして それが気になってた?」 「…………いえ、それほどでも」 「ふぅん」 身体を斜めにして足を組み軽く握った手をテーブルに置いた朝日さんはちょっと上から目線で私を見下ろしている。 既に冷めてしまったカフェオレを両手で持ってそれを見つめて視線を避けた。 「そんな事だったんだ」 鼻で笑って口元を押さえるから朝日さんの表情は分かり難い、でも嘲笑うように笑ってくれているだけでも私はほっとしている。 「まぁ…………だったらそろそろ帰ろうか」 朝日さんは立ち上がりテーブルにあった伝票を取りレジへと向かって行ってしまった。 私は慌てて立ち上がり荷物を持って追い掛けようとしたが、がつっと太ももをテーブルの角にぶつけてしまった。 「いっ………っぅ」
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