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朝日さんは歩きながら小さく鼻唄を歌っていて、コツコツと鳴る靴音がゆったりリズムを刻んでいるようだった。 「朝日さん もしかして恋人ごっこが重荷になってる?」 鼻唄の理由は 私がもうすぐ卒業するからかな。 「…………」 「だったら無理しないで 私も前よりは大丈夫になってるから」 「誰もそんなこと言ってないでしょ?」 「だって朝日さんこの間から 優しかったり怖かったりで………… 情緒不安定なんですか?」 「ちょっと 女子じゃないんだから 情緒不安定とか言わないでよ」 言い合いをしながら歩く速度は早まっていった。 だったら何なの? 朝日さんは飄々として 気分に波なんて無いと思っていたのに 感情が乱れてる彼の対処の仕方が分からない。 だって最近 私の言葉で不機嫌になること多いから だから迷惑なんじゃないかって思って………… もっと深みに嵌まる前に 自分から離れなくちゃいけないって そう思っているのに 朝日さんは離れなくて良いって言う。 それじゃあ 私が苦しくなっちゃうんだよ。
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