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彼女はその紙袋の中を確認すると漸く俺を見て言葉を発した。
「…………覚えてます?」
「忘れた」
「…………」
「なんて言う訳ないじゃん」
だって本当に印象が裏返ったというか……忘れることなんて出来ないよ。
「面倒な恋してるねお前も」
「…………」
山野の表情は居心地悪そうに眉が下がり、俯いてしまった。
「物好きだね」
「…………」
「まだ好き?」
「湯原さん…………」
耐えきれなかったのか顔を覆って下を向いてしまった。
「こんな俺でも
好きなの?」
だから確認したいんだよ。
人の気持ちに気付かずに片想いもばれていた、そんな俺を本当に好きなのか。
「湯原さんっ
もう止めてくださいよ」
「止めない」
テーブルの上で固く握られた拳を手で包んだ。
「止めるな…………」
「………………」
今にも泣き出しそうな潤んだ目を向けられどうしていいか分からなくなる。
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