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「俺が思うに…………単純だと思うよその人」
「単純?」
「きっとユリさんの言葉に翻弄されてる」
「そうかな…………
まだ好きなんじゃない?先輩の事」
唇を尖らせて愚痴を溢す。
「先輩…………ってあやめちゃん?」
「あ…………うん」
うっかり口を滑らせてしまった。
寧ろ彼には話していたと思い込んでいた。
「面白いね」
労うような顔して言葉は裏腹。
ちっ
心の中で舌打ちをした。
「その人に限らず、男は単純だよ
好きって言われて、好きでいてだなんて脈がある証拠じゃん」
陶器に入った焼酎を飲み干した彼はそう言った。
私は小鉢に入っているたこわさを行儀悪くぐりぐりかきまぜていた。
「それとも
俺と付き合う?」
「…………」
口に運ぼうとしたたこわさが箸からぽとっとテーブルに落ちた。
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