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「やっと戻ってきた」 個室の入口で湯原さんが壁に凭れて待っていた。 「ユリー携帯鳴ってるよ」 「それ先輩の ちょっと取って」 人の会話が遠くに聞こえる。 「先輩、電話鳴ってますよ?」 ユリに手渡された掌で振動する携帯をぼんやりと見ていた。 「先輩?切れちゃいますよ?」 「あ」 ユリに言われて親指に力を入れる。 ピッ 「…………う」 喉の奥に何か込み上げて来たので口元を片手で押さえ携帯をユリに押し付けた。 「え!?先輩!」 ユリが私を呼ぶ声を遠くで聞きながら お手洗いに駆け込み咳き込む。 「う………ゲホッ」 胃液が少しだけ逆流してきた。 「先輩ーーお水ですよ」 コップ片手に様子を見に来てくれたユリに背中を擦られ、ゆらっと揺れる空間にぼーっとしてしまう。 「あはは」 「急にどうしたんですか?」 何だか楽しくて仕方無くなってきた。 目の前のユリが焦った顔して何か言ってる。 やっぱり可愛いなぁ。 「ぎゃっ 先輩!重いっ!離れてください」 ぎゅっとユリに抱きつく。 「ユリー………」 「寝ちゃダメです! も………センパーイ」
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