1/21
前へ
/75ページ
次へ

「解散しよう」 唐突に言われた。 「え…?」 突然すぎて言葉が詰まる。そもそも何を解散するのかが分からない。こいつの話はいつも主語が無い。 「いやいや、そんな『何を?』って顔すんなよ。このバンドを解散しようって事だよ」 ふむふむ、話が見えてきたぞ。ちなみに、『このバンド』と言うのは俺とこいつとあいつで組んでいるバンドの事だ。 「俺たちそろそろ現実見てさ、大人になろうよ」 俺とこいつとあいつのあいつが優しく言った。『このバンド』は結成から3年目になる。と言っても俺らは19歳。中学卒業と同時に組んだバンドだが…現実は残酷である全く売れない。 「お前には悪いと思ってる。お前は歌う才能はある、だが俺らには楽器を扱う才能が無い…努力でもどうしようもない…。それに、高校行ってないのに仕事もせずこんな事もう出来ない…。お前も解るだろ?」 全く解らん。 …が 「…あぁ。今までありがとな、迷惑かけてすまん、じゃあ今日で解散って事で、俺はお世話になった人に礼言ってくるから、お前ら帰っていいよ、じゃあな、就職頑張れよ、今までありがとな」 俺は泣きそうになりながら早口で言った。 「またな」 「ごめんね」 そう言って2人が静かに出ていった。俺は1人で部屋に残り、泣いたのは秘密な。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加