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「解散しよう」
唐突に言われた。
「え…?」
突然すぎて言葉が詰まる。そもそも何を解散するのかが分からない。こいつの話はいつも主語が無い。
「いやいや、そんな『何を?』って顔すんなよ。このバンドを解散しようって事だよ」
ふむふむ、話が見えてきたぞ。ちなみに、『このバンド』と言うのは俺とこいつとあいつで組んでいるバンドの事だ。
「俺たちそろそろ現実見てさ、大人になろうよ」
俺とこいつとあいつのあいつが優しく言った。『このバンド』は結成から3年目になる。と言っても俺らは19歳。中学卒業と同時に組んだバンドだが…現実は残酷である全く売れない。
「お前には悪いと思ってる。お前は歌う才能はある、だが俺らには楽器を扱う才能が無い…努力でもどうしようもない…。それに、高校行ってないのに仕事もせずこんな事もう出来ない…。お前も解るだろ?」
全く解らん。
…が
「…あぁ。今までありがとな、迷惑かけてすまん、じゃあ今日で解散って事で、俺はお世話になった人に礼言ってくるから、お前ら帰っていいよ、じゃあな、就職頑張れよ、今までありがとな」
俺は泣きそうになりながら早口で言った。
「またな」
「ごめんね」
そう言って2人が静かに出ていった。俺は1人で部屋に残り、泣いたのは秘密な。
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