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ザ――――……
突然の風が、
桜の木を吹き抜ける。
舞い散る花びらが、
ひらひらと彼女を包み込むように散っていった。
真琴は、
まるで導かれるようにそっと後ろを振り向く。
…そして、
そこに立つ「人影」に一瞬目を見開くと、
自然と笑顔を溢した。
それは、
一人の「青年」だった。
薄藍の着物に紺の袴。
少し長めの髪は、
頭の後ろで高い位置に結わえている。
整った端正な顔立ちをしている「彼」は、
真琴に向かって優しい微笑みを浮かべていた。
(…ああ、やっぱり…)
その笑顔を見ると、
泣きたくて苦しいくらい切ないのに…
嬉しくて嬉しくて仕方がない。
真琴は自然と駆け出して、
その胸の中に飛び込んでいた。
―…たとえ「夢」でもいい
それでも
また「あなた」に会いたかった――…
――――――
――――
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