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扉に拳を打ち込んだ。かなり威力が高かったらしく、表面がかなりへこんでいる。 俺は振り返る事無く立ち去った。玄関に行き、靴を履き替え、学校を出てバイト先に向かう。身体の火照りがゆっくりと消えて行くのを感じ、同時に怒りも薄れて行く。 「……お前には一生かかってもわからんさ。…年中幸せなお前には、な。」 春のまだ微かに冷たい風に吹かれ、何時もの冷静さを取り戻した。 「よし…バイト行くか。…やべ!?」 時間を見たらなかなかヤバい時間だった。仕方なく走った所、タッチの差で… 「遅い。遅刻だぞサヤ。」 「ち…ちくしょぅ…」 間に合いませんでした。 「お前が遅刻とは珍し……いや、いい。早く奥で着替えてきな。」 俺の顔を見て何かを悟ったようだ。何も言わず、何も聞かずにいてくれた。 この人は……高山 風夜の姉、高山 野乃(のの)さん。数少ない尊敬出来る人だ。風夜の事を「死ねこの愚弟!!」と罵る規格外の性格の持ち主だ。髪を赤く染め、短めに切っている。
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