それは突然的に……

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否、これは僕がいろんな場面を撮る為の貴重な犠牲だから、断じて、断じて! 不誠実じゃない! 多分。 僕は悠灯に連れて行かれるまま、豪華絢爛な校舎へ向かった。 * 数十分後、たぶん何処かの廊下。 なんとか僕の勘と悠灯の勘で理事長室へ辿り着いた。 僕が二回に一回の割合で悠灯の突き進む方向を正して進むと、あら吃驚。三十分で理事長室に着いちゃった。 目の前に並ぶ扉の真上にある、黒地のプレートに金で『理事長室』と明朝体で彫られた物を発見し、僕は安堵感に包まれた。 「すげーな紡義って! 何で理事長室の場所が分かったんだ?」 「んー……何となく? さっ、入ろっか、悠灯」 「おうっ失礼しまーす」 ドアノブを右に捻ると、ガチャっと意外と庶民的な音を立て、ドアを開けば中から徐々に大きくなってくる声が聞こえた。 百姉の(無駄)知識によれば、理事長さんは王道転校生の叔父さんで、理事長さんは甥っ子の転校生君を溺愛してるだとかしてないだとか…………。 悠灯も大変そうだなあ……。 「ゆ、う、ひ――――! 会いたかっぶへあ!」 おお……悠灯が理事長さんを倒したー。パチパチー。 中から声と共に飛び出てきたのは恐らく理事長で、語尾が変になってしまった理由は悠灯が再び閉めた扉に顔面直撃したからだ。 御愁傷様です。 「理事長気持ち悪いです近寄らないで下さいていうか一生出てくんな」 「息継ぎなしか。ていうか冷たい! 折角久しぶりに会えたのに!」 「ちょっ! 余計な事言うな! 紡義にバレんだろ!」 「僕、もう二人の関係は把握してるから別にいいよ? バラさないし」 「うえええ!」 わーお。悠灯が滅茶苦茶驚いてるー。なんか面白いなー。 僕が二人の関係を知っている事を話せば、悠灯は理事長の胸ぐらを掴んだまま此方に向き直り、驚愕した表情を向けてきた。 「え? 俺と理事長の関係……知ってんの?」 「うん、叔父と甥っ子でしょ? 大丈夫だよ。悠灯が隠してるなら誰にも言わないから」 「あ……うん。ありがとな、紡義」 僕は無闇矢鱈に人様の触れられたくない個人情報を誰かに話す趣味は無いし、この学園で出来た最初の友達を困らせる真似はしたくない。 誰にでも、触れられたくない過去や事情の一つや二つ、あるだろうし。 僕が誰にも漏らさない旨を伝えると、悠灯は理事長さんの胸ぐらを掴んだまま安心した様な表情になり、可愛らしく微笑んだ。
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