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「どういたしまして。んじゃ、部屋の説明とか聞きに寮長室に行こっか」
「おうっ!」
悠灯は眼鏡と鬘の上からでも十分分かるくらいに、太陽に向かって咲く向日葵の様な眩しい笑顔で答えた。
案外悠灯を下ろしてみると、僕との身長差が余り無く、目線も同じくらいという事に気付く。
……僕より身長の小さい子、いないかなあ……。
そんな、細やかだが切実な願いを心の隅に押し寄せ、気持ちを改めて寮長室と彫られた扉の横に備え付けてあるカウンターの呼び鈴を鳴らした。
チーン☆
…………留守かな?
チンチンチンチンチン…………。
「うっせえよ! んな何回もチンチンチンチンチン鳴らさなくても聞こえてるわっ!」
「なら早く出ろよ」
もっともなツッコミだ。流石悠灯。もっとも過ぎてフォローが出来ないや。
そんないきなり右の扉から出て来た半裸の男(多分先輩)に素早く且つ的確なツッコミをいれた悠灯を頭の中で誉める僕。一方、呼び鈴が大分煩かったのか、額に青筋を立てている先輩らしき人を見上げた。
派手な金髪に黒い眼をした上半身裸の先輩らしき人は、どうやら中でヤっていたらしく、全身と扉の隙間から鼻を刺す様な嫌な臭いがした。
場所を考えてよ……臭いな。
「時と場所を考えて下さい。何か臭います」
「ん、そうか? ていうか誰だよお前ら。見ねえ顔だけど、編入生?」
「はい、朝霧紡義です。此方が……」
「桑奈悠灯……です」
「そうかそうか。理事長から話は聞いてる。まあ中に入れ」
寮長さんは半分開いていた扉を全開にして自分は先に中へ入って行く。僕達も先輩に続いて中へ入った。
「失礼します」
「邪……失礼します」
悠灯……邪魔するぞって言おうとしたね……。この先大丈夫かな……?
後ろから付いて来ている悠灯を横目で見ると、頭を俯けていて表情は分からなかったけど、臭いが気になるんだろうな。
僕でも流石に臭いと思うし。
「臭いは気にすんな。何か飲むか? 一通り揃ってるが」
「あ、じゃあカフェオレをお願いします」
「お……僕はココア……お願いします」
「了解。後で寮官も来るっつってたから暫く待っててくれ。俺も着替えたいし」
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