2650人が本棚に入れています
本棚に追加
緊張で握っていた拳に手汗が滲む。すると後ろから突然声を掛けられた。
「お、君は誰……ですか?」
「っあ、ぇと……その……ううう……」
「ちょっ、落ち着け。一先ず落ち着け。な?」
吃驚した……まさか後ろに人がいるなんて思わなかった……。
突然後ろから話し掛けられた事に僕は驚き、何も言えなくなった。
多少の人見知りの僕は今でも初対面の人と上手く話せないけど、この人が落ち着かせてくれたお陰で幾分かは話せるようになった。
「はあ……すみません、取り乱したりして。荻原学園の方……ですか?」
キタアアアアアアア!!うわあ何これ百姉怖いよ。僕今すぐ此処から立ち去りたい気分だよ。
僕はお辞儀をし、視線を上げると其処にはモジャモジャ黒髪に分厚い黒縁眼鏡を掛けた、百姉が言っていた子がいた。
所謂、王道転校生と云う人だ。
身長は僕より数センチ低く、瞳は真っ黒。多分カラコンだろうけど……。
「いや、お……僕は転校生、です……君も?」
「あ、はい。僕も今日転校してきたんです。名前は?」
「お……僕は桑奈悠灯って言うん、です。よろしく」
「あ、朝霧紡義です。よろしく桑奈君」
「悠灯でいいよ。お……僕も紡義って呼んで良い、ですか? それと、敬語もいいから」
「あ、うん。よろしくね、悠灯」
「おう! よろしく、紡義」
(恐らく)眩しい笑顔を浮かべる悠灯は本当に嬉しそうで、ついつい僕も笑い返した。
僕達は互いの自己紹介を済ませると、唐突に正門が重々しく音を発てて開き、中から人が現れた。
制服をキチンと着こなし、腰まである薄い金髪を髪紐で軽く斜めに結って前に流している美人な人だ。
この人、副会長さんかな……綺麗な人だなぁ……。
僕はその人に見惚れていると、彼方から声を掛けられた。
「君達が転校生ですか?」
「お……はい」
「はい、そうです。失礼ですが、貴方は?」
「申し遅れました。私の名前は水無月天葉。生徒会副会長を務めています」
以後、お見知り置きを。と副会長さんは言うと、軽くお辞儀をし、また王子スマイルを向けてきた。
うん。百姉の言う通り、笑顔が胡散臭いな。ハッキリ言えば気持ち悪い。ていうか愛想笑いだろう。
悠灯が王道転校生成る者だったら、此処でこの愛想笑いを見破るんだよね……多分。
「なぁ、その張り付いた笑顔、見てて気色が悪くなるからやめてくれない? 似合ってないし、吐き気がする」
「「っ!」」
最初のコメントを投稿しよう!