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「とりあえず、君の名前を聞いてもいいかな?」
ごく当たり前の礼儀だろう。小学生といえど容赦はしない。
『高科 榮(たかしな さかえ)です。昨日も言ったじゃないですか。ボケてます?』覚えてないどころか知らないからね?『ちなみに年は15歳、来春から高校生です。……ああ、そういえば貴方の名前を聞いてませんでした。』…曲がりなりにも保護者になる人間の名前を聞いてなかったのか。変なとこ抜けてるのな。……まぁいい。
「俺は岸浜 爾人(きしはま ちかと)。職業は翻訳家。何かもう住み着く気満々みたいだから出ていけとは言わん。部屋も自由に使え。ただし条件がある。」ここまで一息で言うと、少女は不思議そうな顔をしながら『なんでしょう?』と尋ねた。俺は言い放った。
「食事の準備と家の掃除を頼む。望むならば駄賃も出す。」すると少女は事も無げにこう言った。
『ああ、そのくらいなら喜んでさせていただきますよ。それにお駄賃は要りません。私は貴方の娘なんですから。』
……やっぱり娘になるってのは決定事項なのね。っと…
「あれ?高校生?」
『ええ、来春からですが』
すみませんでした。
こうして、無駄に利発かつ自信満々な少女と、ずぼらなオッサンの共同生活が始まったのであった。
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