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「ふーん、その格好って山賊のんじゃないの?実は結構な賞金首だったり?」
完全に挙動不審な一団にかまをかけて俄に鋭い視線を向ける。
「いやいやいやいやいやいや!!か、駆け出しっす!!駆け出しのぺーぺーっす!!賞金首なんて夢のまた夢っす!!」
「ふーん、ま、別になんでもいいんだけど、どうやら俺の勝ちみたいだしね――…」
最後の方の言葉は小さく、自分に語り掛けるようだったので山賊達には聞こえなかった。
ハルは、常々雲州斎からこう言われていた。
『戦わずして勝て』と。
最初の頃は、そんな無茶な!とひたすら抗議していたが、次第にその意図も分かるようになった。
光陰流とは、生たる光と死たる陰を司る流儀である。
また圧倒的な光りたる存在で陰を払い、死を呼ぶ陰となりて光を呼ぶ。
生と死、光と陰、希望と絶望、その両方となり戦いを治めるのが理念である。
強ければ強い程、恐ろしければ恐ろしい程、優しければ優しい程、この理念は成り立つ。
まさに今、この状況。
戦わずに山賊の一団をひれ伏せさせた。
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