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山の頂でどたばたした後、森の中に建てたおんぼろの家に戻り、説教が始まった。
「…――分かったか?もう二度とは言わんぞ!
全く、最後くらいちゃんとせんか!!だいたいハルは「わぁった!わぁったってば!ちゃんと言い付け守るから安心して!じゃね!」っておい!!待たんかぁ!!」
小言を聞くのはもううんざりとばかりにほとんど荷造りもせず、着の身着のままいつも持ち歩く刀と葛だけであばら家を飛び出していった。
げんこつを貰い受けてから小言と今までにハルに授けた世の中の知識を確認していたのだが、ついにハルの我慢も限界だったようだ。
ハルが物心ついた頃にはここにいた。
親がわりの壮年の男、剣の師であり、教師であり、家族であり、友人である男、八尾雲州斎と。
ハルはただジイと呼び、雲州斎もまたハルを本名で呼ばずただハルと呼んだ。
ハルにとってジイとの二人の生活は他と比べようもないが楽しかったし、二人の生活に疑問も特に持たなかった。
ジイは何でも知っていたし、何をやらせても上手く、教え方も抜群であった。
そして、ハルの方も雲州斎の人生史上で最も高い学習能力を持った弟子であった。
二人の素晴らしい素地により、光陰流過去最短最高で免許皆伝をなし得たハルだった。
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