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ハルは、パッと見はやや上背のある黒髪に黒目の一般的な青年である。
しかし、黒目がちの好奇心に満ちた瞳はやや幼さを残すが、山で育ち厳しい修行を受けたせいか精悍な顔付きをしていた。
都市や街で見ればなかなかにいい男である。
外見上は一般人の範疇であるが、住み慣れた家とも言えぬあばら家を飛び出し、猟場を駆け抜け未知の世界へと向かう姿は異常であった。
自身の鍛え抜かれた筋肉をしなやかに活かした跳躍は一蹴りで大木を幾つも越えて、信じられないスピードで山を越えて進んでいく。
(確か南西にひたすら"影無し"でとばしたら1日で街道に着くって言ってたな……
いっちょ限界に挑戦してみっかな?)
ジイの教えに従い向かう方角は決まっていたが、"影無し"と言われる光陰流の体術での長距離を移動するのは初めてであり、若さ故に己の限界を知ろうと早速好奇心が湧いてきていた。
雲州斎は自給自足で賄えないものを時折街まで買い求めに行っていた。
街道に出るのに1日、街まで1日、往復4日の旅路であった。
一般人であれば3倍以上を要していたであろう。
いや、そもそも二人の住んでいた地域には生きて行くことも帰ることも不可能であろう。
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