裏町の顔

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「ごちそうさまでした!! いやぁ、マジで旨かったよ!あの最後のクマ豚の焼いたやつなんてスパイスの効いたソースが絶妙で……ああ、なんせ旨かったよ!!」 腹が膨れて満足したのか感想まで話し出す始末。 その顔は幸わせに満ちていた。 「へぇ、クマ豚の味が分かるのか。よく牛肉と間違える奴がいるのによ」 「ええ!?全然違うじゃん!あの独特の甘味がいいのになぁ」 クマ豚とはコフィ周辺の森に住む"木登りする豚"である。 その味は牛肉に近いが独特の仄かな甘味があり、何よりその毛皮が高値で取り引きされる珍獣である。 (こいつ一体何者だ?かなりの味覚センスがあるな、クマ豚の味が分かり少量のスパイスを効かせてるのを見破るとはな。大食らいで腕っぷしがあるなら、内のメンバーにも食材班として欲しいな……) もしかしたら目の前の青年が希有な存在かも知れないと感じ始めたマスターだった。 「なぁ、あんた。名前を教えてくれないか?俺はこの酒場でギルドのマスター、"砂塵のバースコート"だ」 「俺はハルだ!よろしくバースコート!……てかギルドマスター?」 「ハル、か。よろしく頼むわ。ギルドのことは後で説明するとして、腕相撲大会どうする?参加するんだろ?」 「あ、そうだった。ここで金を「「「うぉおおお!!」」」 ハルが店に入った目的を思い出した瞬間、店内を大歓声が埋め尽くした。 『優勝は鉄鋼街のナックルだ!!』 「「「……」」」 どうやら腕相撲大会は終了したようだ。 .
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