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「俺はステッドラー・レベラーだ、主にパーティーのバーテンダーや庭師とかの雑用ばかりのギルドメンバーさ、宜しくな。あんたの名前は?」
「俺はハルだ、仕事は持ってない。こちらこそ宜しく!」
お互い手を差し出し合い固い握手を交わした。
戦争や狩りのような花形の仕事に向かず、器用さを買われて雇われている。
仕事に文句はないが、脚光を浴びることのない生活にハルの眼差しはありがたかった。
ハルは一通りのことは出来るよう雲州斎に育てられたが、街ならでは仕事については無知であり、そういう仕事に就く者に尊敬の眼差しを向けた。
「ハルは何をオヤッサンと話してたんだい?」
「実は――…
ハルに興味を持ったステッドラーは何か力になれることはないかと話を聞いた。
ハルもまたステッドラーの態度に好意を抱き、山から出た経緯をサンタンとエリーゼの部分をぼかしながら話した。
どうにもあの二人は有名人のようで話すと面倒くさそうな気がしたからだ。
「……そうか。マクベスにアンリエッタのバアサンな。意味のある話になるか分からないが、以前マクベスを見張った時の話をしようか?その時は人手が足りなくてミワと一緒に張り込んだんだ」
「頼む、是非聞かせてくれ!」
「あの調査期間の間にマクベスは現れなかった。マクベスの構える店はジャック街ニコラス通り3番地から南に下った場所にあるんだが、今は開けていない。昔は色んな雑貨を扱う店で繁盛していたんだが、本人が店に出ることはなかった。年のいったじい様に店番をやらせて本人は商品を買付に行っていたらしい。
そしてじい様が亡くなってから店は開いたことはない。しかし、人はやってきていた。店のポストに何かを投函し、夜な夜なマクベスがそれを見るといったことらしい。俺達が調査に当たった頃には誰も来なかった。
けどな、怪しい奴が一人だけうろついていた」
ステッドラーは真剣な表情でカウンター越しにハルへ寄る。
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