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「そいつはローブを羽織り、そのフードを深く被り正面を決して見せなかった。かなり用心しているようだったな。店の前を行き過ぎ、間をおいて戻ってくる。尾行の上手い仲間を呼んで後をつけたが巻かれたんだ。
ひょっとしたらそいつがマクベスかも知れないし、仲間かも知れない。
調査が打ち切りになったその後、俺は一度だけそいつを見たんだ。後ろ姿は間違いなかった、だから尾行したんだがやはり巻かれてしまった……
今の店には誰もいないし前のように店のポストに何かを投函する者もいないが、怪しい奴が近くにいることだけは覚えておいてくれ」
ステッドラーの話は穏便なものではなかった。
かなり怪しい上にギルドの尾行をまくとなると、それなりの訓練を受けた者の可能性が高い。
ハルの行く末が俄に物騒になってきた。
「ステッドラー、ありがとう。話は無駄にはしないよ」
ハルはステッドラーの話をしっかりと頭に入れて礼を言う。
二人の間に確かな絆が生まれようとしていた。
「なぁ、ところでさ、今日俺泊まる所が「うぉい!!なぁーに辛気くせぇ顔してんらよ!こっちに来て一緒に飲もうぜぇー!!」「そうだぞ!俺の優勝祝いだ!だははははは!!」っておい!ちょっと!や、やめろ!」
随分と酔っぱらったバースコートとナックルが酒場で唯一真面目な雰囲気を出していたカウンターに絡みに来た。
ご機嫌な二人は有無を言わさずハルを拉致。
口元へ強引に酒を運ぶ。
屈強な男になすすべもなくハルはしこたま酒を飲まされた。
「っ!?うまっ!!なにこれ!もっとくれ!」
「おお!?いけるくちじゃねーかハル!ナックル、もっと注いでやれ!」
「よし来た!ほら若造もっといけぇい!だははははは!」
酒の味を覚えたハルは次々と飲み干す。
心配そうに見つめるステッドラーをよそに騒がしい夜は朝まで続いていった。
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