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一人困惑するステッドラーを残しハルとバースコートは通りへ出た。
アンリエッタは不動産業を営んでおり、構える店はニコラス通りの西側、ダニエルの中心地"ダニエル街"よりにある。
ジャック街が開拓される頃、アンリエッタの先祖が土地の整備事業にあたった為にその名残でジャック街にはアンリエッタの土地が多いらしい。
さらにこのアンリエッタ。若い頃は"フィッシャーマンの薔薇姫"と言われる程の絶世の美女で、色んな男から色んな物を貢がれてとんでもない額の金品を得たという。
いつしか、男よりも美よりも金に目が眩むようになり、守銭奴のようになった。
アンリエッタ・アームス、54歳、独身、特定の付き合う男も無し、自分が招いた境遇とは言え寂しい女のようだ。
道々バースコートから聞いた話ではハルには理解出来ない人種のようで、ハルにも少し不安が過る。
(……俺、大丈夫か?)
しかしそれでも雲州斎の最後の指示に従わんとニコラス通りを西へと進む。
やがて、前方右手によく目立つ一つの看板を見つけた。
「お、気付いたか?あれがバアサンがやってる"アームス不動産"だ。気ぃつけて行ってこいよ?」
「え!?一緒に来てくれねーの!?」
「バカヤロー、これはハルの意思なんだろ?俺は案内しただけだ。それだけでもありがたく思え!」
「うぅ…確かに。分かった、ありがとうなバースコート」
ハルはしぶしぶといった様子で別れを告げて店に向かった。
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