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『アームス不動産』と、でかでかと書かれた看板の下には、
"富豪様から庶民共まであらゆる条件に対応します"
と付け加えられている。
全体的に清潔感のある店構えだが、看板からしてそこはかとなく怪しさが滲んでいる。
間口5mはある広い店の入り口は清潔に保たれているが、所狭しと賃貸物件の宣伝板が並んでいて、目が飛び出す程高いものから信じられない程安いものまで、謳い文句通り幅広く様々な物件を扱っているようだ。
中を覗けば店の奥にカウンターがあり、薄い緑の綺麗な制服を来た三人の男が客の対応をし、他の店員は壁に張られた幾つかの新しい建物の絵の前で揉み手をしながら接客している。
また店内の中央にある4つのテーブルでは契約が行われているようだ。
店を覗くハルの横を客が出入りしていて繁盛しているようだ。
とりあえず入ってみるかと店に入れば店員から清々しい「いらっしゃいませ」の挨拶。
聞いていた話とは随分違う印象を受けたハルは一瞬戸惑ったものの、近くにいた店員に話し掛けた。
「あの、すいません……」
話し掛けられた男性店員は爽やかな笑顔で対応した。
「はい!賃貸物件をお探しですか?それとも土地建物のご購入でしょうか?」
店員のハキハキとした話し方に若干おされながら目的を告げる。
「いえ、あの、アンリエッタ…さんはいますか?」
「社長に用事でしたか、どういったご用件でしょう?」
少し落ち着いたトーンで切り返す店員には、こんな見知らぬ若者が一体何用?といぶかしむ色が現れていた。
「えーと、マクベス商店、についてなんですが……」
「っ!?しょ、少々お待ち下さい!あ、えと、お、お名前はなんとおっしゃるので?」
店員はマクベスの名を聞くなりかなり狼狽し取り乱した。
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