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「そうだね、確かに金だったら何でもいいさね。汚れていようが、何だろうが金は金……
ただすぐに払えるあてはあんのかい?住む所は?手持ちにいくらある?
店をやるなら資金を貸してやってもいい。そうすればとりあえず食べていけるし、店に泊まれば雨風もしのげる。
それに店が繁盛すれば大金持ちだぞ?悪い話じゃあるまい」
どこかからかうような口調でハルの退路を断つように誘い、戸惑わせるアンリエッタ。
話を聞けばいいことづくめだが、その借りる金もまた返すとなれば相当な額の借金になりかねない。
やはりハルは首を縦にはしない。
「ていうかさ、マクベスがどうなってるか分からないんだから他の人に貸したらどうなの?お金払ってないなら契約なんて無視すりゃいいじゃん!」
店があるからいけないんだ、と考えたハルは深く思慮せず思ったままを口にした。
が、その言葉にアンリエッタは激昂した。
「馬鹿なこと言うんじゃないよ!!契約を守れないような商人なんざぁカス以下なんだよ!!何も知らないガキがでしゃばったこと言うんじゃない!!だいたい世話になった人間が困ってるかもしれないのにお前さんは何とも思わないのかい!?会ったことがなかろうと世話になってんなら自分から進んで身代わりになんのが男だろう!!つべこべ言わずに店を継げばいいんだよ!!」
「は、はい!!」
アンリエッタの夜叉のような剣幕に押され、ハルは思わず返事をしてしまった。
「ふん、分かればいいんだよ…」
「あ、いや、まだ「まだ何かあんのかい!?」いえ何もありません……」
抵抗を試みたハルだったが、アンリエッタの素早い恫喝に沈黙してしまったハルだった。
ハルに腕では敵う者も少ないだろうが、口ではアンリエッタに敵いそうもなかった。
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