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山賊達は呆然とした。
ありえない、考えられなかった。
数々の修羅場を潜るも眼前のドラゴンには敵わなかったのだ。
それを一介の剣士が、目にも止まらぬ剣技で一瞬の内に仕留めたのだ。
恐ろしいまでの強さを目の当たりにし、呆けていたが先頭を走っていた大男は別のことが頭に過った。
(なんと見事な腕前……はっ!?ま、まさか賞金稼ぎじゃないだろうな!?いや、ギルドの人間か!?どちらにせよ、あそこに立っていたのは俺たちを待ち受けていたかも知れんぞ!!まずい、まずいぞ!!)
一難去ってまた一難。
ハルの素性を知らぬ山賊の頭領は現在の状況がさっきより酷くなっている可能性に思い当たり、身動きが取れなくなってしまった。
どうやったのか知らないがあの巨大なドラゴンの頭を木っ端微塵にしたハルは血振りをくれ刀を鞘に納め、振り向いた。
そして、ちょっとムスッとした表情で口を開いた。
「おっちゃん!なんで今のチャンスを見逃すかな!?ホーランドドラゴンは焼き殺すか内側から破壊するしかないのに!遅いから代わりに仕留めちゃったよ?」
仕留めた獲物を検分せずにとりあえず見知らぬおっちゃんに文句を言うハル。
実は街道に出て初めて見た人間がどうドラゴンを倒すのか期待していたハルだった。
「ん!?しょ、賞金稼ぎじゃないのか?」
「へ?賞金稼ぎ?……ああ!そんな仕事あるんだったね。ん?おっちゃん悪者なの?」
墓穴を掘った頭領は慌てて首を横に激しく振った。
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