始まり

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あっという間に、一人だった俺に家族が出来た。 初めは俺を利用しているのかと思ったが、アイツラは…あの人達は、俺を気に入ってくれた。あまりに居心地が良くて、不安になり「いつまで鬼を住ませて利用する気だ?」と聴いたら、いつも笑顔が絶えないあの人達から笑顔が消え、怒り出した… 鬼が言うのもなんだが、鬼の様に恐ろしかった… あの人達は本当に変わっていた。 いつも優しい貴族の父と、いつも優しく笑う母、好奇心が強く母親に良く似た笑顔で周りの空気を和ませる一人娘の姫、そしてたくさんの従者。 その誰もが、鬼である俺を恐れなかった。 「時に同じ人間の方が何倍も恐ろしい、お前に会った時も襲ってきたのは人間だ」と、父は言った。 長い間一人で居た俺には優しすぎる人達だった。 人間の全てがあの人達の様だったら、鬼も人間も共に暮らせただろう… そんな事あり得ないのだから、現在人間の前から鬼は消えてしまったんだろうけど…
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