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「や、やめて……」
笑顔を産み出す凶器の、鈍い輝きに怯えて、上手く声が出ない。
「ようを、ようを…よくも……」
愛しい我が子は、狂ったようにもう一人の名を呼ぶ。
「よ、ようは、ようのことは、仕方なかったのよ!」
だからお願い、それを下ろして!
後半の叫びは声に出なかった。
あんなに優しい色をしていた、大きな二重の目。
それなのに今は濁っていて、恐ろしさしかない。
「許さない」
大きな二重の目が、更に大きく開いた。
父親譲りの大きな目。
「あ……」
冷たいものが喉をかっ切った。
冷たい。
これは、罰なのですか?
無宗教の私が神に問うのは卑怯なのかもしれない。
どろりとした自分自身の体液が、私とようを同じ生き物にする。
「よう、よう、ごめん、ね……」
狂った我が子に、ようを重ねる。
ごめんね、ごめんね……。
「こんな母親で、ごめんね……」
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