来棲仁香

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「返して欲しければ、僕のいうこと聞いて?」 彼は、にこっりと微笑んだ。 その顔は、不気味で鳥肌が身体中を駆け巡った。 「何...。」 彼を直視せずにぽつりと呟く。 「君さぁ…。家に帰らないの??昨日も夜遅くまでうろついてたでしょ」 帰らない?? 帰らないんじゃない。 家には、帰ってるよ。 ただ、帰っても私の居場所がないだけ。 それに、あそこにいる自分は存在してるか分からなくなる時がある。 「帰らないんじゃない。帰れないんだよ。何も…、わかってないくせに私のことわかったみたいな事言わないで…。」 苛ついた。 なんで、そんなことあんたに聞かれなきゃいけないの?? 「わからないよ。君の事なんて。ただ、君は僕と同じで…。」 その、言葉のあとは 彼の口から聞かなくてもわかっていた。
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