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「お母さんが、知らない人にはついていくなって言ってた」
「知らない人って……お向かいさんだぜ?」
「知ってるよー」
「じゃあ、いいじゃん」
僕がそう言うと、そっかぁ、と顔をほころばせて、ナツミは立ち上がった。
母親が帰ってくるまで。もしよかったら、こういう時のために、合鍵も預かっておこう。
「散らかってるけど、気にすんなよー」
「うん!」
ナツミを部屋へ入れた後、母親が分かるようにと、僕は書き置きを向かいの郵便受けに挟めた。
部屋に女性が来るなんて、何年ぶりだろう。
女性っていっても、まだ幼女だけど。
僕が部屋へ戻ると、ナツミは早速リビングテーブルで、ランドセルを開いていた。
「何やってんの?」
「宿題。お家に帰ったらね、一番にやりなさいってお母さんに言われてるの」
「へぇ……」
意外にしっかりしたお母さんだと思った。
そういえば、ガキの頃、母さんに同じことを、耳にタコができるくらい言われてたな、と苦笑して台所へ向かう。
「ナツミちゃん、おやつ食べるー?」
「うん!」
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