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ナツミの話で分かったことが、父親はナツミが小さい頃に亡くなったこと、母親は昼間はスーパーでパート、夜はコンビニでバイトをしているということだった。
ナツミ曰く、夜のバイトはナツミが小学校に上がった今年から始めたらしい。
娘が小学生になって、更にお金がかかるようになってしまったのだろうか。
ナツミのボロボロのランドセルが、家の経済状況の厳しさを物語っていた。
僕は非常にやるせない気持ちになった。
夜の9時をまわった頃に、向かいの郵便受けがガサガサと音をたてて、僕の家のチャイムが鳴った。
ちょうどテレビを見ていた僕とナツミは、お互い顔を見合わせた。
「お母さんだっ」
小走りで玄関へ駆け寄るナツミの後を追って、僕はドアを開けた。
「どうも」
「すいませんっ、遅くなりました」
ナツミの母親は、ペコペコと気の毒になるくらい頭を下げた。
改めて、本当にきれいな人だと思った。
ナツミとよく似ている。
「お母さんおかえりー」
「こらっ、鍵持っていき忘れたでしょ」
「ごめんなさーい」
こういうところを見ると、ナツミもまだ幼いんだなと思う。
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