≪出会いの秋≫

6/8
前へ
/165ページ
次へ
ナツミの話で分かったことが、父親はナツミが小さい頃に亡くなったこと、母親は昼間はスーパーでパート、夜はコンビニでバイトをしているということだった。 ナツミ曰く、夜のバイトはナツミが小学校に上がった今年から始めたらしい。 娘が小学生になって、更にお金がかかるようになってしまったのだろうか。 ナツミのボロボロのランドセルが、家の経済状況の厳しさを物語っていた。 僕は非常にやるせない気持ちになった。 夜の9時をまわった頃に、向かいの郵便受けがガサガサと音をたてて、僕の家のチャイムが鳴った。 ちょうどテレビを見ていた僕とナツミは、お互い顔を見合わせた。 「お母さんだっ」 小走りで玄関へ駆け寄るナツミの後を追って、僕はドアを開けた。 「どうも」 「すいませんっ、遅くなりました」 ナツミの母親は、ペコペコと気の毒になるくらい頭を下げた。 改めて、本当にきれいな人だと思った。 ナツミとよく似ている。 「お母さんおかえりー」 「こらっ、鍵持っていき忘れたでしょ」 「ごめんなさーい」 こういうところを見ると、ナツミもまだ幼いんだなと思う。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

294人が本棚に入れています
本棚に追加