神様のお茶会

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「……あー、それはだな」  どう説明したものかと考える。  手っ取り早く、神からお前を貰ったと告げるのがベストか? ルシフェルが俺の言葉に逆らえないと感じるのは、恐らく神が何らかの細工をしたに違いないが……。 「――んーまぁ、結構面白そうだしそんなのどうでもいいか。御主人様が神からお前に変わったってとこだろ?」 「…………はっ?」  突然現代の高校生みたいにノリの軽いことを言い出したルシフェルに、俺は思わず立ち止まって彼を振り返る。  彼は予想外にも両手を頭の後ろで組んで怠そうにしていて、鬱陶しい髪に隠れていない口元はにやついていた。  勝手にクールキャラだと思い込んでいた俺は、普通に驚く。え、ちょっと待って。  俺は手を伸ばし、無遠慮に彼の髪をかきあげる。  するとそこにあったのは文句なしのイケメンフェイス――もっと言うなら、その顔は天使というよりホストみたいな造形をしていた。  ……さすが堕天使、と言ったところか。 「ん、何?」  にっこり爽やかに笑われて、俺は「いや、何もない」と手を離した。ばさ、とまたルシフェルの顔に長い髪の毛がかかる。 「――まぁ、要はそういうことだ。今日からお前は神じゃなくて俺の下僕。わかったな、ルシフェル」 「オッケー、わかった」  やっぱり軽い調子でルシフェルは言って、口元を三日月型に歪めた。 「神に仕えるのも飽きてたしな!」  そう言って笑うルシフェルを見て、俺は彼が堕天になった理由がよくわかった。  ……まぁ、思ったより気が合いそうなやつで良かった。終始シリアスムードってのも嫌だしな。  それから少し歩くと、俺達は魔王の自室らしき場所に辿り着く。個人用としては馬鹿みたいに広い、ゴシックっぽい部屋だ。  ウォークインクローゼットを発見、キングサイズの天蓋つきベッドの横を通り、そこに入る。  思った通り凄い量の衣類が並んでいた。  適当に黒い燕尾服を選んで、俺はぽいとルシフェルに投げた。 「やる。でもまだ着るなよ。お前は風呂と散髪が先だ」  ルシフェルは神の元での牢獄生活が長すぎたせいか、結構汚い。今着たら、服が汚れてしまうだろう。
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