神様のお茶会

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 ちょうど隣の部屋に魔王用と見られる風呂があったので、ルシフェルをそこに行かせる。  ルシフェルが風呂に入っている間、子供みたいな体型の俺は、自分のサイズに合う服を探すのに苦労していた。  違う部屋に何故か女物の衣類が見つかったので、まぁ着れるだけいいかとなるべく動きやすいものを選んで身につける。スカートではなくズボンだし、問題はないはずだ。  そもそも前世では女に生まれることもざらだったし、正直俺は自分が女だろうと男だろうとどうでもいい域に達しているのだ。とくに女物にも抵抗はない。  ついでに姿見があったので覗き込むと、そこには新しい俺の顔が映った。 「……うわ」  ちょっとつり目の赤い目、長い睫毛、白い肌、桃色の唇。つまりめっちゃ女顔。  髪も長いし、服もそうだし、本当に女の子みたいだ。女物着て、逆に良かったかもしれない。絶対燕尾服とか似合わねぇわ、これ。 「うわお、女みたい」  魔王の部屋に戻ると、ルシフェルが俺を見てそう呟く。手には鋏、どうやら自分の髪をカットしているらしい。  意外と器用なようで、ルシフェルは十分もかからずに自分の髪を切り揃えた。  鬱陶しい髪がなくなり燕尾服を着こなした彼は、本格的にホスト――いや、好青年になる。 「どう御主人様? おかしくない?」 「大丈夫だ」  まったく問題ない。 「俺も切るか」  このぐりんぐりんした髪、綺麗ではあるが女の子のようだ。邪魔だし、少し勿体なくはあるが切ったほうがいいだろう。  ルシフェルから鋏を受け取り、肩のあたりで切ろうと刃を当てる。次の瞬間、もちろん髪はすっぱりいく予定だったのだが。  ばきっ、と鋏の刃が割れた。 「…………は?」  無傷の髪と鋏を見比べて、俺は疑問の声をあげる。  一応補足しておくと、その鋏は銀製の高価なもので、切れ味も確か。  えぇと、つまり?  銀製の鋏が、魔王の髪に負けた。 「…………」  今更だけど俺、人間じゃない。
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