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神は大変退屈しておられました。
神は創世の鐘が二千も鳴って足りないほどの遠い昔にお生まれなられたのです。永遠とも永劫とも取れる時間の中、退屈しない方が難しいことでしょう。
怒ることにも愛することにも飽きてしまわれた神は、良い退屈しのぎはないものかとそのたおやかな御御足を小さき泉の中に入れ、ぷらぷらと弄んでおりました。
その時小さき泉に生まれた波紋は静かに広がって、その先に偶然在った名も無き世界に土砂降りの雨を降らせます。
神があまりにも長い間そうなさっているものですから、とうとうその名も無き世界は雨水に溢れ、暗闇へと流されてしまいました。
「嗚呼、しまった。やってしまった」
神はそこでやっとその名も無き世界に気を留められ、その掌で小さき泉からその名も無き世界をお掬いになられました。
「すでに壊れてしまったか。どう思う、お前よ」
神が私に問われましたので、私は少し思案し、こうお答えしました。
「もう壊れてしまったかと」
すると神は頷き、そうだなと私に同意をくださいました。
「では、また直せばよいこと」
神がそうおっしゃいました刹那には、もうすでに名も無き世界は元通りになっておりました。
嗚呼、神の何と慈悲深いこと!
神はその名も無き世界をそっと小さき泉に戻し、そうだと呟き私のもとへと歩いて来られました。
「お前よ、我は面白いことを思いついた」
「何でございましょう」
私はそう答えます。すると神は「今はまだ、秘密だ」と答え、私にこう御命令なさいました。
「次に創世の鐘が鳴るまでに、アダムの息子とイヴの娘を九百九十九集めよ。適当に摘んで、我の元に連れてこい」
「どの世界からでしょうか?」
私が問えば、神は少しも考えることなく、短くおっしゃいました。
「第七実験世界だ」
「神の御心のままに」
私はそう答え、跪づいてから神の間を去ります。最後に少しだけ振り返ってみれば、神はとても面白そうに、どこかの名も無き世界を突っついておりました。
~ただ神に従うだけの天使・記
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