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「おいちょっと、御主人様!? どうすんだよこれっ、うわあアっ!!」
「……、ぐッ」
こいつ……!
遥か上空から落下していることにパニックを起こしたらしく、ルシフェルが咄嗟に俺を掴んだ。
それは良い。別に構わん。むしろ別々に落下する可能性が薄れて都合が良い。
だが、掴んだ箇所が問題である。
よりによって、胸元のリボンタイを掴みやがった。いや、確かにそれなりに長くてひらひらして、掴みやすいのはわかる、掴みやすいのはわかるだが。
「どーすんだよ御主人様っ、落ちるっ、落ちるって!」
「……、……っ」
どうすんだよどうすんだよって言いながら引っ張らないで欲しい。首が圧迫されて、呼吸が。
呼吸が危うい。
◆ ◆ ◆
「あ、起きた?」
目が覚めたら、目の前にはルシフェルの顔面どアップだった。
イケメンなので、無駄に迫力。
「…………」
ルシフェルが俺から顔を離したので、視界が開けた。見えたのは空。どうやら俺は、屋外で地面に仰向けに寝ているようだ。
俺は寝てた――のか?
いや、何で?
「もう俺、心配したんだからな」
ルシフェルの声に、俺は身体を起こした。見回せばどうやらここはどこかの森。四方八方から野生の動物の気配がした。
俺の横に座ったルシフェルは、状況確認している俺から目を離さないまま話し続ける。
「御主人様は突然真っ青になって気絶しちゃうし、それに絶賛落下中だし! 何とかなったからよかったけど……、そしたら今度は御主人様はずーっと目ぇ覚まさないしさ。御主人様の目が覚めて、俺、本当に良かった……」
しおらしく言うルシフェル。
いや、普通はここで心配してくれたルシフェルに「ありがとう」なり何なり言うんだろうけどさ。
気絶したのって、間違いなくお前のせいだよね。お前が俺のタイ引っ張ったからだよね。
「…………はぁ」
まぁそもそもの落下の原因は、魔法陣を失ったこと。あれは事故とはいえ俺の責任だろうし、ルシフェルが俺を窒息死させそうになったことはおあいこってことで不問にしてやろう。
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