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「で、ここ何処だよ」
見る限りじゃ、何処かの森の中。
それ以外まったくもって状況が掴めないんだが。
なるべく具体的な答えを期待していたのだが、ルシフェルはあっけらかんと答えた。
「どっかの森の中」
……お前も知らない訳ね、はい。
俺の呆れたような顔に気づいたルシフェルは、不満げな顔で弁解し始める。
「だって俺、御主人様抱えて着地しようと必死だったし。周りなんて見てねぇもん。海に着地しなかっただけ褒めてほしいくらいだぜ」
「成る程。それなら仕方ない、か」
俺は立ち上がり、地面に寝転がっていたせいでついた汚れを払う。
「で? どうやって着地したんだ?」
俺もルシフェルも無傷、服にも小さな綻びすらない。何か特別な手段を取らないかぎり、あんな高い場所からの落下でこれは有り得ないことだ。
「あ、それが吃驚なんだ!」
急にルシフェルが声のトーンをあげて、少し興奮した調子で言う。
「俺、堕天になって翼をもがれてからは神の御加護を失ったはずなんだけど、神の奇跡が使えたんだよ」
「神の奇跡?」
何だその大層なネーミングの力は。
「あ、御主人様は人間だし知らないか……、天使が使う魔法みたいなもんだよ。神の力を使って火ぃ出したりできるよ」
ほら、とルシフェルはこないだ俺がやったように手の中に小さな火を燈してみせた。
「そんなの使えるなら早く言えよ」
俺、お前は肉体以外は普通だと思ってたんだが。使えるって知ってたら、もうちょっとこき使ってたのに。
しかしルシフェルは、そんな俺の悪態にぶんぶんと首を振った。
「だから使えなかったんだって! 少なくともさっきまでは! 神の御加護がないんだから当たり前だろ!」
「そんな当たり前は知らん」
百回転生したが、天使になったことは一度もないからそんなことは知らん。
「で、急に使えるようになった心あたりでもあるのか?」
「……んー、ある。かも」
ルシフェルは難しい顔をして腕を組み、右手を顎のあたりに当てて曖昧な答えを返した。
「何だ。言え」
ルシフェルは表情を変えないまま、うぅんと一度唸ってから言った。
「さっきまで気づかなかったけど……、魔王城出てからずっと神の気配がする」
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